酪農に携わる方ならTDNという言葉を聞いたことがある方が多いと思います。
しかしながら、なんとなく用語の説明はわかるけれども詳しい内容はわからないという方も多いのではないでしょうか。
今回は酪農におけるTDNについて分かりやすく説明していきます。
TDNとは牛の中に貯まるエネルギーのこと
TDNとは簡単に説明すると牛の中に貯まるエネルギーのことです。
つまり、TDN率が高ければ高いほど太りやすいということです。
TDNは代謝エネルギーとほぼイコールとなります。
難しく説明すると下記のとおりです。
TDNは可消化養分総量のこと。
飼料の栄養価の指標となり、飼料中の可消化養分の単位当たりのエネルギー量から求められる。
計算式はTDN(kg)= 可消化粗タンパク質 (kg) + 2.25 × 可消化粗脂肪 (kg) + 可消化粗繊維 (kg) + 可消化可溶性無窒素物 (kg)となります。
人間で表現してみましょう。
そのうちが全て内側のエネルギーとなるわけではありません。
尿や糞として不要なエネルギーは排出されます。
例えば1kgのご飯を食べたとします。
そうすると内訳は下記の通りとなります。
- ごはん・・1kg
- 糞・・0.33kg
- 尿やおなら・・0.03kg
- 代謝エネルギー・・0.64kg
TDNはこの代謝エネルギーのことをい
TDNは牛のコンディションを整える上で重要な指標
TDNは牛のコンディションを整える上で非常に重要な指標です。
TDN充足率の数値が適正であれば、多くの搾乳ができ、反対に適正でなければ、搾乳成績は悪くなります。
TDNが乳牛のコンディションに与える影響を具体的な資料を確認しながら見ていきましょう。
日本政策金融公庫のTDN給与水準の資料
平成28年に開示された日本政策金融公庫の資料を確認してみましょう。
- 1乳期を通じて、TDN72%、CP18%のTMRを給与する1群
- 泌乳後期にTDN69%、CP15%のTMRを給与する2群
(参考資料:初産次高泌乳牛における一乳期一群飼養の TDN 給与水準)
これら2つを比較し、調査したところ下記の結果となりました。
明らかに1群の方がコンディションが良かったという結果になりました。
各種の成績も
- 305 日4%乳脂補正乳量(FCM)・・9215kg
- 泌乳持続性(LP)値・・95.4
- TDN充足率・・90.7%
- CP充足率・・116.7%
- 産乳性、栄養充足ともに2群区より優れている
- 空胎日数・・ 83 日
良い成績になったことがわかります。
このことから適正なTDNの値にすることの重要性が分かります。
日産合成工業株式会社 学術・開発部の夏分娩の乳量改善に関する資料
TDNの重要性がもっと分かりやすい飼料が日産合成工業の資料です。
平成24年6月に開示された「夏分娩牛の乳量低下は乾乳後期(移行期)の栄養改善で防げる 」の資料を確認してみましょう。
乳量が落ちる夏にTDN含有量64%のTMRとTDN含有量68%のTMRを与えた結果下記の通りとなっています。
TDN64% | TDN68% | |
分娩後1週後の乳量 | 31Kg | 34Kg |
分娩後2週後の乳量 | 34Kg | 36Kg |
分娩後3週後の乳量 | 36Kg | 39Kg |
このとおり、TDN68%の方が明らかに乳量が上がっています。
つまり、乳牛のボディコンディション及び乳量の増加のためにはTDNは非常に重要な指標であることが分かります。
乳牛の改善を目指すなら、まずはTDNの数値を見直してみよう
今回はTDNの意味や効果について解説してきました。
ポイントは下記の通りです。
- TDNは牛の中に貯まるエネルギーのこと
- 乳牛はTDNを意識することで、コンディションの改善や乳量の増加が見込める
- 適正な値にすることが重要
TDNは乳牛のコンディションや乳量の増加に大きな影響を与えます。
搾乳や分娩間隔、コンディションなどで悩んでいる方はまずはTDNの数値を見直してみることをおすすめします。
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